役職手当で気をつけておかなければならいのが、割増賃金の支給との関係です。いわゆる管理監督者に関する問題です。これは、本当に相談が多い内容です。
例えば、役職手当は労働基準法第41条の第2号の管理監督者に該当する社員に支給すると取り扱っており、かなり多くの社員が、役職手当支給対象者とします。そして、これらの社員は、労働基準法上の管理監督者であるため、残業手当を支給していなかったとしましょう。これは、リスクが高い状況です。
すなわち、労働基準法上の管理監督者として認められるには、かなり厳しい要件をクリアしなければならないからです。具体的には、以下の要件について総合的に判断されることになります。
・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
・現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
・賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること |
従って、多くの社員について労働基準法の管理監督者として取扱い、残業手当を支給せず、役職手当を支給しているとします。そして、仮に争いが生じ、裁判で社員が管理監督者として認められなくなった場合は、残業手当を支給する必要が生じ、さらに、この役職手当も残業手当を支給する際に計算上、算入されることになります。
特に、中小企業の場合は社長の権限が強く、役職者でも管理監督者として適さないケースが多いのが実情です。労働基準法上の管理監督者に該当しないリスクが高い社員につきましては、役職手当について割増賃金の支給に考慮したかたちにすることが有効です。
このような場合、よくご提案するのがみなし残業手当です。これは、残業手当として一部の諸手当をそのまま取り扱うことです。例えば、役職手当を8万円支払うとし、この役職手当はみなし残業手当として取扱うことです。
残業の計算では、@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F1カ月を超える期間毎に支払われる賃金は、残業手当の算定基礎からの除外を認めており、それ以外の手当は算定の対象になります。
ただ、この場合の役職手当は、みなし残業手当扱いとなっていますので、割増賃金の算定除外となります。
みなし残業手当について定めるのであれば、就業規則であらかじめ明確に規定しておく必要がありますので、この点、ご注意ください。
規定例を紹介します。
<就業規則での対応>
(役職手当)
第○条 リーダー職の者について支給する。
2.支給額は、一律80,000円とする。
3.前項の役付手当は、時間外労働手当の内払いの性格を有するところから、第○条に基づき算出される時間外労働手当の支払いに当たっては、同算出額から役付手当を控除した額を支払うものとする。ただし、実際の時間外労働手当の合計額が役付手当を超える場合はその超過分を加算して支払うが、その合計額が役付手当に達しない場合にも役付手当を減額しないものとする。 |
役付手当の80,000円については時間外労働手当相当分の性格を有していることが規定されており、みなし残業手当を意味しています。一方、計算の結果、80,000円を超える時間外労働手当は、きちんと計算して支給しますが、80,000円に達しなくても80,000円は減額して支給することはない点も記載しています。
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