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「職場のメンタルヘルス対策の実務と法」(民事法研究会 2009年4月4日発行)
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「これだけで改正雇用保険法のすべてがわかる」(日本法令 2009年7月15日発行)
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トップページ → 最近の裁判例からみた人事労務管理の改善提案 → 私用メールへの対処法
1.私用メールへの対処法
〜企業は従業員の問題行為を放置してはいけない!〜
(K社事件・東京地判平19.9.18 労判 947-23)
1 コンピュータ・ネットワーク化によるトラブルの増加
昨今の企業内外のコンピュータ・ネットワーク化は、一般の予想をはるかに超えて急速に進展しています。これに伴って、社内ネットの不適切な利用による顧客情報の漏えいを始めとする犯罪、ウィルスへの感染、ネットの私的利用等、人事労務管理上のトラブルも顕著になってきました。そして、これらに対応するためのルール作りの必要性が指摘されていますが、企業の対応は未だ十分とはいえないようです。
2 ネットの私的利用は全て問題となるのか
そもそも、ネットの私的利用について、企業はどのように考えるべきなのでしょうか。従業員は、労働契約上、職務を誠実に遂行すべき義務を有しています。したがって就業時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控えなければなりません。これを、「職務専念義務」といいます。私用メールは、この「職務専念義務」に反する行為となりますが、全ての私用メールがこれに該当する訳ではありません。
3 最近の裁判例(解雇無効例)
最近のK社事件は、就業時間中の私用メールや中傷メール等につき、次のように判断しました(東京地判平成19年9月18日労判947-23)。まず、私用メールについては、就業時間中に世間話や同僚のうわさ話といった業務に直接関係のない話をすることは一般的に行われていることであり、全てを職務専念義務違反に問えるものでないとしました。つまり、私用メールのやり取りが、社会的に許される範囲を超え、職務に支障が出る程度のものであるかが問題となるとしました。その上で、従業員Xの私用メールの頻度(月2〜3通)からすれば、社会的に許される範囲を超えていないため、解雇事由にあたらないと判断しました。また、中傷メールについては、それ自体は解雇事由に該当するとしつつも、解雇の1年以上前から把握していた事実であって、その間、K社はXに対して、事情聴取や口頭注意をしていませんでした。したがって、K社がこれらをどれだけ問題視していたかは疑わしいとして、解雇を無効としました。
4 問題行為を放置してはいけない
これまで、裁判例は、多量の業務外の私用メールの存在が明らかになった場合、企業による調査の必要性を認めるなどしてきました(N社事件・東京地判平成14年2月26日労判825-50)。これは、企業の秩序に違反する行為があった場合に、違反内容を明らかにし、秩序回復のための指示・命令を発し、また違反者に対し必要な懲戒処分を行うためのものです。本件では、私用メールについては、頻度が低いとされましたが、中傷メールについては、解雇事由に該当するとしています。にもかかわらず、解雇無効とされたのは、問題行為が行われてから1年間放置してきたことが最大の弱点となりました。これは、1年間放置していて、企業秩序に支障があったとはいえないだろう、との考えもあったのではないかと思われます。N社事件でも、会社が多量の私用メールの交信を黙認していなかったことを調査の必要性の一要素としてあげています。
以上によると、従業員に問題行為があった場合、時機を逃すことなく措置をとらなければ、その行為の問題性が希薄化する、ということが言えます。つまり、問題行為を発見したら、注意なり、処分なりを適切に行う必要があるということです。また、注意や軽い処分を行っても改善しない場合もあり得ます。このような場合は重大な処分を行うことがありますので、会社は看過せず改善を促す措置を行ったという書面等を残しておくことにもご留意ください。
5 トラブル防止策
このような事態に備えて、ネットの私的利用禁止の規定を規則等に置いて、従業員の注意を喚起することはトラブルの未然防止となります。また、私的利用が頻発した場合に、調査(モニタリング等)を行うことについても、規定しておく必要があります。というのも、会社のパソコンであっても、従業員のプライバシー侵害の問題があり、必要性もなく、行き過ぎた態様でのモニタリングを行うことは問題となるからです。また、突然のモニタリングは、従業員との信頼関係を崩壊させてしまうこともあります。どのような場合にどのような方法で調査を行い、またどのような行為が懲戒処分の対象となるのか明確にし、適切な運用を行う必要があります。
第○条(社内情報機器の私的利用の禁止とモニタリング)
1 私的ないし業務外の目的に、会社のPC、電話、インターネット、E−mail、FAX等の情報機器を利用(以下、不正利用という)してはならない。
2 前項の遵守確保のため、会社は、従業員に対し、不正利用の疑いある場合に、合理的に必要な範囲・方法により、PC内データ、電話、インターネット、E−mail、FAXについてのモニタリングを行う。
3 従業員は、前項のモニタリングについて、異議なく同意し、協力する。
4 会社は、従業員の不正利用が認められた場合、就業規則第○条により、当該従業員に対し、注意または懲戒処分を行う。 |
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