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就業規則テーマ別解説

改正パートタイム労働法

労働条件の明示義務

今回は、労働条件の明示義務について解説します。

まず、事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」を文書の交付等により明示しなければなりません。

もし、違反した場合は10万円以下の過料に処せられますので注意が必要です。

明示の方法ですが、パートタイム労働者が希望した場合は電子メールやFAXで明示することが可能です。ただ、後々のトラブルを避けるためにも、パートタイム労働者が電子メールやFAXを受け取ったかどうか、パートタイム労働者から返信してもらう等により、受信を確認することがよいでしょう。

 実務上は以下の点に注意する必要があります。
・昇給や賞与の支給を事業所の業績やパートタイム労働者の勤務成績などによって行うケースで、業績等を考慮して昇給や賞与支給を行わないことがある場合は、この点を明記します。

・退職手当を勤続年数に基づき支給するケースで、所定の年数に達していない場合は支給されないことがある場合は、制度は「有り」とした上で、「業績により不支給の場合あり」や「勤続○年未満は不支給」など支給されない可能性があることを明記します。

尚、労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者を雇い入れる際は、労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「契約期間」、「仕事をする場所と仕事の内容」、「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無」、「休日・休暇」、「賃金」等は、文書で明示することが義務付けられています。

この点は従来どおりですが、確認しておくとよいでしょう。


労働条件の明示義務

パートタイム労働者から通常の労働者へ転換するチャンスを整備することについて解説したいと思います。

まず、会社は、次のいずれかの措置をとる必要があります。

・通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する。
・通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与える。
・パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。
・その他通常の労働者への転換を推進するための措置

これらの対応例は次のとおりです。

・ハローワークに通常の労働者募集の求人票を出す場合、あわせてその募集案内を事業所内でも掲示し、パートタイム労働者に周知する。
・通常の労働者に係る新たなポストや空席のポストを社内公募で充足する場合、パートタイム労働者にも応募の機会を与える。
・パートタイム労働者から通常の労働者への登用制度を設け、定期的に試験を実施する。

こうした転換を推進するためにも、どのような措置を講じているか、事業所内のパートタイム労働者にあらかじめ広く周知するよう努める必要があります。


また、パートタイム労働法の施行を先取りするようにパート社員の処遇の改善を正社員へ登用する動きもありました。

例えば、ロフトでは、パート社員の人事制度を変更しました。具体的には以下のとおりです。
・雇用契約を正社員と同様に無期契約へ移行します。
・専門職や幹部昇格も可能とします。
・三段階の時給は八段階へ細分化します。
・昇給幅は100円上限から240円まで拡大します。
・人件費の負担は、15−20%上昇します。

また、りそな銀行と埼玉りそな銀行は、パート社員の処遇を見直し、人事制度を一部を除いて正社員と同じにしました。具体的には以下のとおりです。
・基本給や評価基準を同じにします。パートでも課長昇進が可能とします。
・営業等は、正社員と同じ賞与の支給対象とします。
・転勤の有無は評価に影響します。
・退職金や企業年金については対象外とします。

今回のテーマのように正社員への転換ではありませんが、正社員同様の処遇
の動きが目立っています。

おそらく、こうした中から優秀なパート社員については、試験や評価等の客観的基準により、正社員への転換を進めることが考えられます。


労働条件の明示義務

差別的取り扱いの禁止について説明します。

まず、第8条において、事業主は、職務の内容、退職までの長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取扱いをしてはならないと規定しています。

上記の期間の定めのない労働契約には、反復更新によって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる有期契約も含まれます。

すなわち、以下の内容を考慮して、差別的取り扱いの禁止の判断が行われます。

・職務の内容が同じ
・人材活用の仕組みや運用など が全雇用期間を通じて同じ(パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムや慣行から判断して同じ)
・契約期間が実質的に無期契約(「期間の定めのない労働契約を結んでいる場合」または「期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契
約と同視することが社会通念上相当とされる場合」)


労働条件の明示義務

「職務の内容」が同じか否かの判断は次のステップに基づいて行われます。

【第1段階】
業務の内容が実質的に同じか否かを判断する。
パートタイム労働者と通常の労働者の業務の種類(職種)を比較する。
例えば、営業職、販売職、管理職、事務職、製造職等従事する業務の種類が同じか否かを判断する。
・業務の種類は同じ →  【第2段階】へ
・業務の種類は異なる → 職務の内容は異なると判断する。

【第2段階】
従事する業務について、業務分担表などで、個々の業務に分割して整理する。
パートタイム労働者、通常の労働者はどのような業務に従事しているか確認する。

【第3段階】
細分化した業務のうち、「中核的業務」を抽出し、パートタイム労働者と通常の労働者とで比較する。
中核的業務とは例えば以下のものをいう。
○その労働者に与えられた職務に不可欠な業務
○業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務
○労働者の職務全体に占める時間、頻度において、割合が大きい業務

・抽出した中核的業務が同じ場合 → 【第4段階へ】
・抽出した中核的業務が一見異なる場合 → 一見異なる業務に必要な知識や水準などの観点から、業務の性質や範囲が「実質的に同じ」であるか比較する。
・実質的に異なる場合 → 職務の内容は異なると判断する。
・実質的に同じな場合 → 【第4段階へ】
 
【第4段階】
業務の責任の程度が著しく異なるか否か判断する。
この判断に際しては、以下の内容を総合的に比較検討する。
○与えられている権限の範囲
(単独で契約の締結が可能な金額の範囲、管理する部下の人数、決裁権限の範囲等)
○業務の成果について求められている役割
○トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
○ノルマなどの成果への貢献度

・責任の程度が著しく異ならない → 職務の内容は同じと判断する。
・責任の程度が著しく異なる  → 職務の内容は異なると判断する。

以上が職務の内容の判断の流れです。ちょっと難しいですね。
ポイントは、中核的業務や責任の程度が同じか否か手順を踏んで判断することです。

例えば、販売員のパートA、販売員の正社員Bがいたとします。
これは、どちらも販売員ですから、職種は同じですね。
ただ、中核的業務が、パートAはレジうち、陳列であるのに対して、パートBがシフト管理、売場作り、クレーム処理を担当することで異なるとします。
この場合は、中核的業務が異なりますので、職務が異なることになります。

こうした「職務の内容」は画一的に判断することは難しいので、実態をみながら個別具体的に判断していくことになるでしょう。


労働条件の明示義務

「人材活用の仕組みや運用などが同じ」は、次のステップで判断します。

【第1段階】
 パートタイム労働者と通常の労働者の転勤の有無を比較する。
 比較の際は、実際に転勤したかどうかだけはなく、将来にわたって転勤をする見込みがあるかどうかについて、就業規則や慣行などをもとに判断する。
 
・どちらも転勤する  → 【第2段階】へ
・どちらも転勤しない → 【第3段階】へ
・一方のみが転勤する → 人材活用の仕組みや運用などは「異なる」と判断する。

【第2段階】
 転勤の範囲(全国転勤、エリア限定の転勤等)を比較する。

・転勤の範囲は同じ  → 【第3段階】へ
・転勤の範囲は異なる → 人材活用の仕組みや運用などは「異なる」と判断する。

【第3段階】
 「職務の内容の変更」と「配置の変更」の有無を比較する。
 人事異動による配置換えや昇進などによる職務内容や配置の変更はあるか

・どちらも変更あり → 【第4段階】へ
・どちらも変更なし → 人材活用の仕組みや運用などは「同じ」と判断する。
・一方のみが変更がある → 人材活用の仕組みや運用などは「異なる」と判断する。

【第4段階】
 「職務の内容の変更」と「配置の変更」の範囲を比較する。
 経験する部署の範囲や昇進の範囲について比較する。比較する場合は、単に異動可能性のある部署の数が異なるといった形式的な判断ではなく、実質的な判断を行う。

・変更の範囲は同じ  → 人材活用の仕組みや運用などは「同じ」と判断する。
・変更の範囲は異なる → 人材活用の仕組みや運用などは「異なる」と判断する。

ちょっと複雑ですね。
例えば、同じ副店長で転勤がある正社員とパートタイマーで考えてみます。
この場合、もし正社員の副店長が全国転勤であるのに対して、パートタイマーの副店長が転居をともなうことなく自宅から通える範囲であれば、人材活用の仕組みや運用が異なると判断していくことになります。


労働条件の明示義務

契約期間が実質的に無期契約とは、「期間の定めのない労働契約を結んでいる場合」と「期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合」です。

この内容は最終的には裁判で判断されることになりますが、以下の内容が判断材料とされています。
・業務の客観的内容(恒常的・臨時的)
・契約上の地位の性格(臨時的か)
・当事者の主観的態様(継続雇用を期待させる事業主の言動や認識)
・更新の手続き・実態(反復更新の有無や回数、勤続年数、契約更新時の手続き方法)
・他の労働者の更新状況(同様の労働者の雇い止めの有無)

判例では、反復更新していた場合の雇い止めの認否が分かれています。
・東芝柳町事件   最高裁S49.7.22・・・雇い止めが認められない。
・日立メディコ事件 最高裁S61.12.4・・・雇い止めが認められたケース

このように雇い止めの認否は、個別具体的に事案ごとに検討が必要であり、画一的に判断することはできません。

しかしながら、2つの判例では、反復更新を行うことで期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態であれば解雇権濫用法理を類推適用することは一致しています。

そして、これに加えて雇用の継続の期待が高まるほど雇い止めは難しくなり、契約社員の雇用の状況等を総合的に考慮して雇い止めの認否が判断されるといえるでしょう。

この総合的に考慮するという材料が上記の内容になります。
雇い止めについては、注意する必要があります。


労働条件の明示義務

教育訓練については、2つのパターンについて規定しています。

1つめは、職務の遂行に必要な能力を身につけさせるための訓練です。
例えば、経理業務に従事している通常の労働者にその職務遂行上必要な簿記の訓練を実施しているときは、同じ職務に従事しているパートタイム労働者についても実施しなければならないこととされています。

2つめは、キャリアアップのための訓練です。
こうした訓練は、職務内容の違いの如何に関わらず、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力及び経験に応じ、実施することが努力義務化されました。

このようにパートタイム社員の教育訓練について明記されていますが、今こそパートタイム社員の教育訓練に真剣に取り組むべきというのが私の考えです。


こうした事例があります。
パートリーダーがいて、そのパートリーダーが、ビデオ学習したり、社外の講習会の内容を持参して、勉強会を開催しています。

また、早くから正社員とパートタイム社員の教育訓練の内容を同じにしている企業もあります。

つまり、簡単にいえば、パートタイム社員の中には、勉強熱心な方がいるということです。

実際に、私がスーパーマーケットに企業診断で訪問したとき、パート社員が優秀で、適切に対応していただいたこともあります。経験もさることながら、よく商品について勉強しているとも感じました。


優秀な社員は正社員、パートタイム社員の区別で判断するものではありません。
勉強熱心で、会社への貢献度が高いと見込まれる社員には、教育訓練の機会を付与し、成長を実感してもらうよう企業は積極的に支援すべきと考えます。


労働条件の明示義務

ポイントは以下のとおりです。

「事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、その雇用するパートタイム労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。」

この場合において、例えば、給食施設の定員の関係で事業所の労働者全員に施設の利用の機会を与えられないような場合があります。

但し、増築などをして全員に利用の機会が与えられるようにすることまでは求められていません。

しかし、施設の利用規程の対象が正社員に限定されている場合は、パートタイム労働者と正社員に同じ機会を与えるなどの具体的な措置を求めるというものです。

福利厚生施設については、このように規定されていますので、正社員とパート社員間で不公平がないように気をつけたいものです。


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